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ディジタル・マルチメータで電圧測定する(3) 確度について (連載 第5回)
アナログ・テスタでは、メータの指針が目盛りからの垂線上になるようにメータの正面からの読み取らないと正しい値を読み取れません。高精度のアナログ・テスタは目盛りの間に反射鏡が埋め込まれていて、鏡に映ったメータの指針と実際の指針が重なった位置で正しく目盛りを読み取れるようになっています。また正しく読み取れたとしても、目盛りの数は、多くても50~60分割くらいで最小目盛りの半分くらいまでが読み取りの範囲です。JISの規格上もアナログ・テスタの誤差はスケールの最大目盛りの2から4%まで許容されています。
ディジタル・マルチメータで測定した値は、表示された数値を読み取るので、勘違いによる読み取りミス以外に読み取りのエラーは生じません。また、入力されたアナログ量を高精度のA-Dコンバータで変換し結果を得ていますので、10倍以上の高精度化が図られています。
●固有誤差
アナログ・テスタ、ディジタル・マルチメータの仕様については「JIS C1202 回路計」で決められています。JISはJISC(日本工業標準調査会)の検索サイトで確認することができます。ただし印刷することはできません。この中で、精度については固有誤差の上限値について、2つの階級に分け、Aとより高精度のAAの階級について次の表のように定められています。

●AA級の直流電圧の測定で考えると
最大表示値50000のディジタル・マルチメータで乾電池の電圧を測定し、1.5925Vの値が得られました。
指示値の0.2% =1.5925×0.002 =0.0032
最大指示値の0.25%=5.0000×0.0025=0.0125
電池の電圧 = 1.5925 ±(0.0032+0.0125)
= 1.5925 ±(0.0157)
= 1.5768 ~ 1.6082
電池の電圧は1.5934Vと測定されましたが、実際の電池の電圧は1.5777Vから1.6091Vの範囲の値であることになります。
実際のディジタル・マルチメータの仕様を確認すると、PC5000の直流電圧は仕様では、
指示値×0.03% + 2
となっていて、JISの規格よりはるかに良い精度となっています。またSANWAのディジタル・マルチメータの取扱説明書の仕様の欄では、固有誤差は確度と表示されています。
PC5000で測定した電池電圧、
電池電圧 = 1.5925 ± (1.5925×0.0003+2デジット)
= 1.5925 ± 0.0007
= 1.5918 ~ 1.5932
PC20の仕様の場合、
電池電圧 = 1.5925 ± (1.5925×0.005 + 2デジット)
= 1.5925 ± (0.0080 + 2)
= 1.5845 ~ 1.6005
このように、実際のディジタル・マルチメータの価格の差が確度の差としてはっきり現れています。
●同じものを測定しても測定器ごとに差があってもおかしくない
前回も示しましたが、同じ乾電池を測定しても測定器によって差が認められました。
それぞれの、測定器の固有誤差(確度)の範囲を調べてみます。

左側のMASTECHの固有誤差は仕様では、
直流電圧600V以下のレンジでは;
固有誤差 = ±(指示値の0.7%+2デジット)
= ±(1.589×0.007+0.002)
= ±(0.011+0.002)=±0.013
乾電池の電圧 = 1.589 ± 0.013
= 1576 ~ 1.602
右側のPC5000の電池電圧は;
乾電池の電圧 = 1.5918 ~ 1.5932
次の図に示すように真の値の含まれている範囲が固有誤差の大きいほうが広く、その範囲に高精度の測定値が含まれています。
ディジタル・マルチメータは固有誤差のため、異なった測定器で測定した測定値の値は下位の数値も含めてすべてが一致するわけでありません。アナログ・テスタの場合は直感的に誤差の少なさがわかりますが、数値で示されると差があるように感じてしまいます。固有誤差、確度について考慮しながら測定結果を判断します。

●繰り返し測定のばらつきは少ない
固有誤差の大きかったほうのディジタル・マルチメータで乾電池の電圧を繰り返し測定しても、4桁で表示される値は同じ値を示し変動はしませんでした。PC5000の場合は表示が1桁多く5桁表示ですがほぼ同じ値を示しています。また、PC5000の場合6桁表示可能で6桁表示にした場合も安定するまで少し時間がかかりますが、安定すると数デジットの範囲でほぼ同じ値を示します。
このように、ディジタル・マルチメータは真の値との差である固有誤差はありますが、繰り返し精度は極めてよく、同じものを測定した場合、被測定側に変化がなければ同じ値を示します。
*確度 SANWAのディジタル・マルチメータの取扱説明書には、JIS C1202で定義された固有誤差の代わりに確度と表示しています。この確度(固有誤差)で測定された値に対して、真の値が含まれる上限下限の範囲を示しています。
* AA級、A級 SANWAのディジタル・マルチメータはJISの認定を受けていませんので、階級の表示はありません。しかし、ディジタル・マルチメータの5シリーズはAA級以上に相当しそれ以外はA級に相当しています。
* 電圧の校正 ISO9001などでは計測機器の校正確認を年1回以上義務付けています。電子工作の場合、そこまでは要求されませんが確認してみたくなります。メーカにおいて、PC5000で7千円くらいで校正してもらえます。基準電圧を出力するICが発売されています。ナショナル・セミコンダクタのLM4132の最も精度の良いクラスのものは0.05%の精度の基準電圧を出力します。機会を設けてこれらを利用して電子工作のための基準電圧源を作ることも考えています。
神崎康宏
タグ:
JIS
テスタ
固有誤差
確度
投稿者: news 日時: 2007年03月12日 12:15 | パーマリンク |TOPページへ ▲画面上へ
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