南アルプスの北岳の緯度経度
今回、南アルプスの最高峰、富士山に次ぐ国内第二の高峰、北岳の山頂でGPSmap60CSxの動作を確認しました。北岳の山頂には、明治37年(1904年) 三等三角点「白根岳」が設置されました。厳しい環境に100年以上さらされていたため損傷が激しく、昨年新しい三角点に更新されました。
更新された三角点の前には、この三角点の経過が記述されたプレートがありました。このプレートには、この三角点の緯度経度も示されています。
測量法の改正により2002年4月から世界測地系が用いられているため、このプレートに表示された緯度、経度については世界測地系の値で示されています。北岳の山頂に持ち込んだGPSmap60CSxは緯度、経度を世界測地系のGPS84に設定しています。花崗岩でできた三角点の標識の+のマークの上に載せて緯度経度を確認してみました。
経度は同じ値になりましたが、緯度については0.1″差があります。0.5から1m南側にずらすと、次に示すように同じ値を示します。
GPSの表示でも、表示位置の精度が±3mを示していてその範囲内に入っています。緯度1秒に対する地表の偏移は約30mとなります。0.1秒の差は3mとなり、今回の確認結果とほぼ一致します。
緯度の偏移
地球の子午線の4000万分の1として1メートルを決めました(注2)。そのための子午線に沿った地球の全周は約4000万mとなります。360で割れば1度あたりの地表の偏移、これを3600(1度=60(分)×60(秒/分)=3600(秒))で割れば1秒あたりの偏移が求まり、30.86m/秒となります。
最小表示が0.1秒ですので、表示桁からの最小のばらつきの範囲は±3mとなります。
明治以後の地図作成
正確な地図を作成するためには、基準となる経緯度の原点と地球の形状を再現できるモデルが必要となります。1980年の世界測地系が決まるまでは、それぞれの国ごとに基準となる経緯度原点を決めていました。
地球の形状
国内で全国の地形図を作成するために、1892年に東京天文台の経度、緯度を天文観測で求め、日本での経緯度原点を定めました。この経緯度原点を元に各基準点を全国に展開していきました。この測地系が「日本測地系」と呼ばれていました。
地球はその名のとおり球体の天体です。しかし、赤道面の半径と南北方向の半径に極わずかですが差があります。半径で約21km南北方向が少なくなっている楕円体です。この楕円体は地球楕円体と呼ばれ、各時代それぞれ観測成果に応じた楕円体が提案されてきました。日本では、近代国家建設にまい進していた明治政府が、ベッセル楕円体を地球モデルとして日本測地系で国内の地図を作成してきました。
世界測地系
人工衛星の観測などの積み重ねで、地球規模で共通に利用できる測地系が利用できるようになりました。GPSで利用されている測地系も、WGS84と呼ばれる世界測地系が利用されています。日本では2002年の測量法の改正により、日本測地系から世界測地系GRS80に移行しました。この移行により、同じ緯度経度でも測地系が異なると、400mくらいの差があります。
国土地理院のWebページに日本測地系から世界測地系への移行について詳しい説明があります。表題に「いま、日本の国土を測る「ものさし」が、世界共通の、しかも、目盛りが極めて正確な「ものさし」に変わります。」という説明があります。
明治の当時は、各地域で天文観測により経緯度の原点を決めるしかありませんでした。その後、VLBI(超長基線干渉計)などのより精密で全地球規模の観測により、世界共通に利用できる地球モデルが提示されました。その結果、世界共通のものさしが利用できるようになりました。
ベッセル楕円体 :
1941年ドイツの天文学者ベッセルによって提案された地球モデルの楕円体。
GRS80 :
Geodetic Reference System(測地基準系)1980の略、IUGG(国際測地学・地球物理学連合)によって1980年に定められた地球楕円体のこと。2002年の測量法の改正以後、このモデルを利用している。
WGS84 :
GPSのナビゲーション、GPS衛星の軌道情報に利用されている地球楕円体モデル。米国が維持管理している。
注 GRS80、WGS84は実用上同一のものみなせる。
参考文献
「図解 これでわかったGPS」 第2版 ITS情報システム推進会議編 森北出版を参考にさせていただきました。GPS、位置情報、経度・緯度、測地系についてわかりやすく、詳しい説明があり、よい参考書となります。
北岳
赤石山脈の北部の白根山の北端にあるので、北岳と呼ばれています。白根山は北岳、間の岳、農鳥岳の白根三山とも呼ばれています。北岳の三角点の表記は白根になっています。
白根山は富士山に次ぐ第二の高峰で、平家物語の中にも記述があります。
平家物語では、源氏に敗れた平重衡が鎌倉の頼朝のもとに送られる、海道下りの段で、失意の道中の中、大井川の近くで、北の方に頂に雪を冠った白い山が見え、伴の者に山の名を聞くと「甲斐の白根」とのことでした。
惜しからぬ命なれども今日までも
つれなき甲斐の白根をもみつ と歌っています。
丹沢などからもこの白根を望むことができますが、今度5月ころに大井川のほうへ行って、同じ場所から白根を見てみようと思っています。その前に、カシミール3Dで東海道の大井川からの眺望の確認も行ってみます。
次回は、GPSが経緯度を決める仕組みを調べてみます。
