« 連載(29)水耕栽培 栽培のためのツール(6) 制御回路の利用状況 | メイン | EPSONプリンタ PM-T960奮闘記 ~その6~ »

LTSPICE入門(連載17)トランジスタの動作確認

各タイプのトランジスタが用意されている
 電子工作でもICを使う場合が多いのですが、LEDを点灯するためには電流の出力が少ない、異なった電圧のデバイスに出力が必要なときなどに便利に使っています。
 まず、ICの出力の1mA以下の電流をトランジスタで何十倍かに増幅する回路の動作を確認してみます。トランジスタについては、バイポーラ・トランジスタ(PNP、NPN)、FET(NMOS、PMOS、NJF)についてそれぞれ実在のモデルが用意されています。リニアテクノロジー社ではこれらのデバイスを製造していないので、各社のデバイスが選択できます。

ユーザーがSPICEモデルを追加できる
 ルネサス、ロームなど国内のメーカの製品もありました。電子工作などでよく目にする2SC1815は見つかりませんでした。リストにないデバイスもSPICEモデルのデータがあれば、このリストに追加する方法が用意されています。2SC1815についても、このリストに追加して、簡単に利用できるようにします。

各タイプのデフォルトのモデルが用意されている
 いつも利用しているデバイスが見つからない場合、各タイプの具体的なデバイスの型番を設定しなくても、それぞれデフォルトのシミュレーションデータが用意されています。多くの場合このデフォルトのデバイスのシミュレーションで概要はつかめます。
 デフォルトのデバイスは、それぞれ理想的なデバイスとして設定されています。そのため、これらトランジスタの特性を確認するためには、デフォルトのデバイスを利用することで十分目的を達成できます。

トランジスタで電流の増幅を行う
 数mAのICの出力を増幅して20~30mAの電流を流しLEDに十分な光量を得るなどを目的として、トランジスタを利用してみます。そのための回路を次に示します。

 

LTSP170030.jpg電圧源で電源、信号源を準備
 V2の電圧源で5Vの電源を供給します。V1の電圧源は、ピーク4V、1kHzの方形波パルスを作成します。これがSIG1の信号源です。V1にあるSIG1のラベルは出力に設定したラベルです。

入出力ポートのラベルを設定
 配線のなかで、ほかに接続されていない配線の先端はポートと呼ばれ、ラベルの形を入出力、入力、出力とそのタイプに応じた形に設定することもできます。V1に接続したSIG1のラベルは出力、R2に接続したSIG1のラベルは入力に設定しました。同じ名称のラベルは、ポート・タイプが異なっても同一配線に接続されているものと見なされます。

 今回その例として、配線で直接接続しないで出力、入力のラベルで示しました。このタイプの設定は、設定時にPort TypeのInput、Output、Bi-Directから選択して決めます。デフォルトではこの値はNoneになっています。

R2で電圧を電流にしてベースに電流信号を加える
 V1で発生したパルス信号を、SIG1からトランジスタのベースに10kΩの抵抗を介して加えます。信号の電圧が上昇してもQ-Bで示すトランジスタのベース電圧は0.6Vくらいから後は上昇しません。後は電圧の上昇はベース電流の増加となり、信号電圧の変化はベース電流の変化となります。

ベース電流の変化に応じてコレクタ電流が変化する
 トランジスタは、ベース電流のhfe倍のコレクタ電流が流れます。そのため、ベース電流の増減がhfe倍されてトランジスタのコレクタ電流の変化となります。トランジスタのコレクタ電流の変化はR1の電圧降下の変化となり、信号はOUT1電圧変化として取り出せます。
 1kHzの方形波パルスを、デフォルトのトランジスタのベースに加えたシミュレーション結果です。


LTSP170040.jpg 上段の図の赤いラインが入力信号です、ピークが4Vの方形波です。ピンクのV(q-b)のラインがベースの入力電圧でピークでも1V以下の波形です。
 下段の図でベースに流れる電流波形を示しました。入力信号の電圧パルスが、約320μAのピークとなる電流パルスとして記録されています。中段のコレクタ電流はベース電流の同じパルスの形状で、電流値が75倍になっています。

高速のパルスでテストすると
 上記の1kHzのパルスでは、入力信号と同じ形状の出力信号が得られました。次に、パルスのon時間を0.5ns、パルスの期間を1nsとして1GHzの信号でどのような結果になるか確認します。


LTSP170050.jpg 1kHzの信号となんら変わらず出力されます。
 デフォルトのトランジスタは、理想的なモデルとして設定されているため、高速の信号にも理想的な結果を示しています。具体的なデバイスではどうなるか、LTSPICEで用意されている小信号用NPNトランジスタの2N3904でテストしました。


LTSP170060.jpg 0.5nsのオン-パルス、周期1nsではベース電流が流れても、コレクタ電流が流れ始めても直ぐにオフの周期になりコレクタ電流はごくわずかしか流れません。出力端子には入力信号は現れません。
 次に、入力パルスの周期を長くして、5μsのオン・パルス、周期を10μsとした時の結果を次に示します。

 

LTSP170070.jpg 先ほどの条件より、1000倍以上周期が長いのでパルスは出力されていますが、元の波形に比べ電圧の波形のパルスの立ち上がりがだいぶ遅れています。実際のデバイスでは、とくに高速な処理になると理想的な動作とはズレが生じ、場合によっては動作が追いつかなくなります。
 各デバイスの基本的な動作確認にはデフォルトのデバイスによるシミュレーションで多くの場合問題ありませんが、具体的な回路を実現する場合は、理想的な振る舞いのデフォルトのデバイスと現実のデバイスとの差について考慮し、対応する必要があります。
 次回に、電子工作でもよく利用される小信号用トランジスタ2SC1815をLTSPICEに組み込み、2SC1815で動作を確認してみます。

<神崎康宏>


カテゴリ:

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.eleki-jack.com/mt/mt-tb.cgi/1591





おすすめ書籍

会社案内
情報セキュリティおよび個人情報の取り扱いについて

コメントとトラックバックは、spamを予防するために、編集担当が公開の作業をするまで非公開になっています。
コメントはそれぞれ投稿した人のものです。

Powered by
Movable Type 4.1