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LTSPICE入門(22) トランジスタのアナログ信号増幅(1)

トランジスタの信号増幅回路
 トランジスタのスイッチング動作は、十分なコレクタ電流が流れるように、必要とするコレクタ電流の1/電流増幅率 以上の電流がトランジスタのベースに供給できるように考えれば第一の関門は解決します。
 しかし、トランジスタでアナログ信号の増幅を行う場合は、トランジスタの動作点の設定が重要な課題になります。よく利用されるエミッタ共通の増幅回路で、その動作を確認してみます。基本となる回路をLTSPICEの回路図エディタで作成し、次に示します。

LTSP220010.jpg

 R1はトランジスタQ1の負荷抵抗で、ベース-エミッタ間に流れる電流の変化に応じてQ1のコレクタ電流は変動し、その変動がR1の電圧降下の変動となります。OUTにQ1の出力がR1の電圧降下の変動として現れます。出力がR1の負荷抵抗の電圧変動ですので、出力に接続する負荷のインピーダンスによって出力の大きさは変化します。
 それらについてもシミュレーションしてみます。

電源電圧を変動させてみる
 この増幅回路の電源電圧を0Vから24Vくらいまでを0.1V単位で変化させて、トランジスタQ1のコレクタ(OUT)、ベース(INPUT)、Emitterの電圧がどのようになるか確認します。LTSPICEのDC解析により行います。
 トランジスタQ1のエミッタの部分に、電圧の表示をわかりやすくするためにEmitterのラベルを追加します。そのあと、メニュー・バーのSimulate>Edit Simulation CMDを選択して、次のシミュレーションのコマンドを編集するダイアログ・ウィンドウを表示します。


LTSP220020.jpg 今回、このウィンドウのDC sweepのタグを選択します。電圧源を三つまで設定できます。今回の回路では直流電源が一つなので、1st Sourceのタグを選択して、掃引(Sweep)対象のソース名をV1と設定します。掃引のタイプはリニア、オクターブ、ディケード、リストと多様な設定ができます。
 ここでは、リニア(Linear)を選択して、0Vから24Vまで0.1V刻みで電源電圧を変化させ、コレクタ、ベース、エミッタの電圧を確認します。

シミュレーションの実施 
 Edit Simulation CMDのウィンドウで DC sweepの設定を終えると、回路図の画面に次の.dcのステートメントが書き込まれます。
   .dc V1 0 24V 0.1V
 このステートメントは、マウスの右ボタンでクリックするとEdit Simulation CMDのウィンドウが表示されるのでいつでも追加修正でき、シミュレーションの結果を確認しながらシミュレーション条件を変更し進めることができます。

ツール・バーのRUNをクリック 
 ツール・バーの人が走っている姿のRUNをクリックすると、次に示すように黒い画面のWaveform Viewerが表示されます。

 

LTSP220030.jpg マウスで回路図のOUT、INPUT、Emitterのラベルをクリックすると、次に示すようにトランジスタのコレクタ、ベース、エミッタの電圧と電源電圧の関係が表示されます。
 合せて、R4に流れる電流を表示するために、マウスでR4をクリックします。電流表示のときは、マウス・ポインタはクランプ・メータになります。

 

LTSP220040.jpg 横軸が電源電圧で、縦軸が各シミュレーション・ポイントの電圧です。緑がコレクタの電圧のOUT、青緑がベースのINPUT、赤がエミッタを示します。青緑の線は電源圧をR3/(R3+R2)で分圧した電圧になります。
    R3/(R3+R2)=15k/(100k+15)=15k/115k=0.1304
 Q1のトランジスタにベース(INPUT)電圧は、電源電圧が4Vのとき、4V×0.13=0.52Vとなり、ベース電流が流れ始めます。ピンクのラインはエミッタ抵抗R4に流れる電流を示します。

電源電圧4V位までコレクタ・エミッタ間は遮断
 電源電圧が4V以下のときは、ベース電圧が0.5V以下でベース電流が流れず、トランジスタのコレクタ-エミッタ間も電流が流れません。そのため、コレクタ(OUT)の電圧は電源電圧と等しくなります。また、エミッタ電圧はグラウンド電圧の0Vとなります。

ベース電流が流れるとコレクタ・エミッタ間も電流が流れる
 電源電圧が4V以上になるとベース電流が流れる電圧になり、上記の図のピンクのラインで示すようにR4の抵抗にコレクタ-エミッタ間電流とベース-エミッタ間電流が流れます。ベース-エミッタ間電流はコレクタ-エミッタ間電流の数十分の一から数百分の一ですので、ほとんどがコレクタ-エミッタ間電流となります。
 コレクタ電圧は、電源電圧とエミッタ電圧の中間位に設定したときの、ひずみのない最大の出力を取り出せます。

R3の値を変化させてテストする
 次に、R3の抵抗値をパラメータ変数XR3と設定して.stepステートメントで10kΩ、15kΩ、20kΩと変化させトランジスタの各端子の電源電圧の関係がどのように変化するかシミュレーションします。
 メニュー・バーのEdit>Spice Directiveを選択し次に示す.stepステートメントを設定します。

    .step param XR3 10k 20k 5k

 変数 XR3、10kΩを開始ポイントして、終了ポイントの20kΩまで5kΩ刻みで繰り返します。

 

LTSP220050.jpg

 

 実際には10kΩ、15kΩ、20kΩでのシミュレーションが行われます。 

 

LTSP220055.jpg コレクタ電圧の緑色のラインは上から10kΩ、真中が15kΩ、下が20kΩです。R3の抵抗値を増やすとトランジスタのベース電圧が上昇し、ベース電流が増加します。ベース電流が増加するとコレクタ電流が増加します。コレクタ電流の増加により負荷抵抗R1の電圧降下が大きくなりコレクタ電圧が下がります。この結果は、上記のシミュレーション結果からも読み取れます。

ステップ結果を選択する
 今回は3ステップですが、より多数のステップを繰り返したり、複数のパラメータでステップ動作をしたときなど、特定のステップを選択表示することができます。
 グラフ表示ウィンドウをマウスの右ボタンでクリックすると、次に示すように、ドロップダウン・リストが表示されます。

 

LTSP220060.jpg その中のSelect Stepsを選択すると、次に示す、シミュレーション結果を各ステップごとに表示、非表示を選択するウィンドウが表示されます。


LTSP220070.jpg  

 複数のステップを選択するときは、Ctrlキーを押しながら必要なステップの欄をマウスでクリックします。

 次回は、実際の信号増幅のシミュレーションを行います。
 

<神崎康宏>

 

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