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電子(部品を利用したオブジェ)工作
――分子構造模型――

 筆者は電子工作を趣味としていますが、本業は炭素・黒鉛材料の化学です。大学では化学の専攻で、分子構造模型を使って勉強しました。この分子模型の例として、筆者が学生の時に購入したものを写真1に示します。古いので、結合棒が少し黄ばんでいます。

 今回組み立てたのはベンゼンとブタジエンで、添付されているスケール(分子模型を測るとオングストローム単位で読みとれるように目盛りが刻まれている)を用いて分子サイズを推定することも可能です。

     

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写真1――分子構造模型の例(ベンゼンとブタジエン)


 これとは別の種類の分子模型もあります。写真2はいずれもプロパンを組み上げたものです。

     

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写真2――別種の分子構造模型(いずれもプロパン)

 これらの分子模型は分子の構造を勉強するのに役立ちますが、欠点は高価であることです。写真1のものが比較的安価ですが、それでも黒い炭素原子12個と酸素原子2個窒素原子2個がセットになって1400円もします。つまり原子1個あたり、約100円です。従って学生が大きな分子を組み立てて勉強するということは、なかなかできないことでした。
 分子構造模型のことは長い間忘れていたのですが、最近トランジスタをはんだ付けしていて、このトランジスタが分子模型に使えるのではないかということに気付きました。写真3は2SC1815ですが、秋月では200個入りが600円という安さで販売されています。原子1個あたり3円なのです。

     

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写真3――200個入り2SC1815

 2SC1815は黒くて足が3本なので、結合手が3本(sp2混成軌道)の炭素原子の模型として最適です。足を写真4のように広げて、トランジスタ中央から足の先端までが14 mmになるように切断しました。sp2混成軌道で結合した二つの炭素原子間の距離(より正確にいうとベンゼン骨格を形成する際の1.5重結合距離)が1.4Åであることから、14 mmが1.4Åに対応する、すなわち1 cmが1Åに対応するように設定したのです。

 この炭素原子を6個はんだ付けすると、写真5のようなベンゼン骨格ができあがります。

     

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写真4――結合手が3本の炭素原子(sp2混成軌道をとる場合)

     

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写真5――ベンゼン骨格(いわゆる亀の甲)

 このベンゼン骨格に、LED(酸素原子に見立てる。結合手は2本)と小さなコンデンサ(水素原子に見立てる。結合手は1本なので、足の1本は切り取った)を組み合わせると、フェノール(写真6)やベンズアルデヒド(写真7)が完成しました。

 写真8のように炭素原子が多くて複雑なアントラセンでさえ、100円もかからずに組み立てられます。

     

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写真6――フェノール

     

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写真7――ベンズアルデヒド

     

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写真8――アントラセン

 筆者が本職で使用している炭素・黒鉛材料についても、2SC1815を使って分子構造模型を組み立てました。最近話題のグラフェンとC60フラーレンの模型は次のようになります。

     

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写真9――グラフェン(2SC1815を100個使用)

     

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写真10――C60フラーレン(炭素原子の数は60なので、2SC1815も60個)

 グラフェンというのは、層状構造をとっている黒鉛(グラファイト)のうちの、まさにその層1枚をいいます。鉛筆には黒鉛が入っており、鉛筆で字が書けるのはこの層が剥がれて紙に付着するからです(もっとも、グラフェン1枚単位で剥がれているわけではない)。グラフェンは本来、もっと炭素原子数が多くて広い平面構造をとっているのですが、模型としてとりあえず炭素原子100個のものを作りました。
 C60フラーレンについては、コンピュータ・グラフィックスを図1に示しますが、写真10の分子模型もなかなかのものです。C60フラーレンの直径を定規で測ってみると、約7cm(すなわち約7Å)であることがわかりました(炭素原子の中心を測定した場合で、電子雲は考慮していない)。

     

zu-1.jpg
図1――C60フラーレンのコンピュータグラフィックス(Wikipediaより引用)

 このような電子(部品を利用したオブジェ)工作も、アイデアや作り方によっては味のある作品が期待できます。


<塩山 洋>

参考: 1オングストローム(Å) = 0.1ナノメートル(nm) = 1×10-10メートル(m) 1Åの長さが 1 cm に対応しているということは、長さが1億倍されていることです。

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コメント (2)

電気屋的にはもったいねぇ...しか思いつかない。

EOL announced と知っての所業ですか

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