1 概要
自作でのプリント基板作成はエッチングと、切削(ミリング)による加工方法があります。切削による方法は機材が高価なためホビー向けとしては一般的ではありませんでした。 最近になり、ホビー向けの3D切削加工機のiModela(iM-01) (以下、iM-01)(図2-1)と、iM-01に対応したPCB切削ソフトのWINSTAR PCB for iModela(以下、WINSTAR)(図2-2)が発売されました。今回これらの機材を使用する機会がありましたので、切削によるプリント基板製作例を紹介します。

図2-1 iModela(iM-01)
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2 機材・工具の準備
プリント基板製作に必要な機材を表3-1にまとめます。WINSTARPCBで指示される機材もあり、主要な機材であるiM-01とWINSTAR PCBを購入した後で、追加の購入が必要になってきます。この手間を省くため、ここで上げる機材をまとめて購入しておくとよいでしょう。
iM-01では取り付け可能なツールのシャンク径(エンドミル(*1)を固定する部分の直径)が2.34~2.36[mm]となっていますが、このサイズで、基板作成に使用する刃の直径0.5[mm]のエンドミルは入手困難です。このため、表3-1 No.4のWINSTAR PCBに期間限定で添付されているスピンドル・シャフトを使用する必要があります(このスピンドル・シャフトがないと、プリント基板の切削は制約が大きくなります。必ず、WINSTAR PCBにスピンドル・シャフトが添付されることを確認して購入してください)。
スピンドル・シャフトの交換は手間がかかるので、基板製作以外でiM-01を使用するときのためのエンドミルをいくつか購入しておくとよいと思います。
(*1) エンドミルとドリルは異なるツールです。エンドミルは、垂直方向と側面に刃がついているので横に切削できます。ドリルは、垂直方向のみに刃がついており、横方向に切削することはできません。
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4 捨て板の作成
捨て板とは、切削する材料の下に敷いて穴開け時に、刃を受けたり、切削材料とiM-01の間の水平・垂直を出すための物です。捨て板を使用する理由には、以下の3点があります。
(1) 水平・垂直を作る
iM-01のスピンドル・シャフトとテーブルの間は完全な垂直ではありません。プリント基板の切削ではZ軸(深さ方向)に0.1[mm]単位で切削を行う必要があります。このために、iM-01のスピンドル・シャフトに対してテーブルの面が垂直になる平面を作る必要があります。
この平面を作るために、テーブルの上に"捨て板"と呼ばれる材料を固定し、捨て板の表面を切削して平面を作ることで、iM-01のスピンドル・シャフトと、テーブルの傾き を吸収します。
(2) 底面のバリを押さえて、刃を受ける
捨て板は、プリント基板の穴開けや、基板の切り出し、切り抜きをした時に発生する底面のバリを押さえて、材料が傾くのを抑制します。この時に、テーブルを保護する目的ももっています。 何度か切削を行うと、捨て板の表面に穴や溝が付き、基板の固定ができなくなったり、平面が保持できなくなったりします。こうなったら、捨て板表面を再度切削して、面出しをしてください。
(3) ツールの剛性を上げて、たわみとブレを防止し、加工精度を向上する
テーブル上に捨て板を置くことで、切削対象の基板と、ツールの間を短くすることができます。このことによって、ツールをスピンドル・シャフトに深く差すことができるため、剛性が高くなります。この結果、ツールのたわみが小さくなり、刃先の逃げを防ぎます。
iM-01のテーブルは、その構造から、手前と奥側で上からの力に対して微妙に傾きが発生します。切削を続けると、やがて刃先が摩耗し、銅箔を切り抜くことができずにテーブルを押さえこみ、表面ですべってしまうようになります。特にルーター・ビットの場合は、突出しが長いと、ツールがたわんで表面をすべり、逃げやすくなります。捨て板をテーブルに固定することによってこのような現象を抑制することができます。
また、突き出しが短くなることで、回転の芯ブレ幅が減少します。これらの効果によって加工精度が向上します。
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5-2 iM-01の原点設定
(WINSTAR PCB ステップ5-7、15~18の補足)
WINSTAR PCBでは、自身のアプリから原点設定しますが、ここではiModelaのコントロール・ツールの"Roland iModela Controller"(以下、iModela Controoler)で設定します。
iM-01とパソコンがUSBで接続されていることを確認した上でiM-01の電源を入れ、 iModela Controllerを起動します(図5-2-1)。

図5-2-1 Roland iModela Controll
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5-3 WINSTAR PCBの切削データ設定
(WINSTAR PCB ステップ5-1~5、8~14、19、20の補足)
WINSTAR PCBのメニューバーの"ファイル"-"図面を開く"(図5-3-1)で、WINSTAR PCBのインストール・ディレクトリ下にある"\WinstarPcbiM\面だしデータ\サイズ86×55"フォルダを開きます(図5-3-2)。

図5-3-1 ファイル-図面を開く
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6 基板切削データの作成
WINSTAR PCBはガーバーデータから、iM-01を制御するための切削データを作成します。この章では、ガーバーデータ作成から、WINSTAR PCBでの切削データの作成までを説明します。
切削によるプリント基板の作成では、切削に使用するエンドミルのブレ、エンドミルの刃径からくる切削限界があり、これを考慮してパターン設計を行う必要があります。これらの点を含めて説明します。
切削に使用するエンドミルは刃径0.5[mm]を使うことを前提にしています。
6-1 ガーバーデータの作成(DesignSpark PCB)
WINSTAR PCBで使用するガーバーデータの作成元となる、回路図CADに指定はありません。今回は無料の回路図CADであるDesignSpark PCBを使用しました。使用方法については、配布元のWebを参照してください。
◆DesignSparkPCB Web
◆DesignSparkPCBの使い方一覧Web
◆日本語取扱説明書
ガーバーデータを作成に当たって、iM-01の制限と、切削によるプリント基板作成特有の条件を盛り込んでおく必要があります。この条件を表6-1-1にまとめます。
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6-2 切削データの作成(WINSTAR PCB) WINSTAR PCBはガーバーデータから、切削データを生成し、iM-01の制御を行います。ガーバーデータには、パターン・レイアウト、パットの穴径のデータが入っています。WINSTAR PCBでは、このデータに加えて配線以外の銅箔部分の処理と基板切り出し用のカット線の設定を行います。
WINSTAR PCBを起動させて、メニューバーの"ファイル-ガーバー読込"でガーバーデータを選択します(図6-2-1、図6-2-2)。表示されているファイルをどれでもよいので選択すると、そのフォルダにあるすべてのガーバーデータが表示されます(図6-2-3)。

図6-2-1 ファイル-ガーバー読込
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6-2-1 パターン間のショート確認
図6-2-1-1でのツールバーの赤丸で囲んだ"ショート確認"ボタンを押すと、パターンが白色、ドリル穴が青色、切削領域が赤色、未切削領域が黒色で表示されます。パターンの白色同士が、未切削の黒色でつながっている部分がショート状態になっていることを示します。
図6-2-1-1では、緑色の丸で囲んだところがショート状態になっています。

図6-2-1-1 ショート確認
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6-2-3 ランド穴の調整
ガーバーデータ・ファイルから指示した場合は、ランド穴径をここで設定する必要はありません。ランド穴径を個別に調整する場合や、基板の固定用のネジ穴を追加する場合に設定します。

図6-2-3-1 抜き穴設定窓
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6-3 切削データ完成
図6-3-1に調整前のデータ、図6-3-2に調整後のデータを示します。図6-3-2のデータで基板切削を行います。

図6-3-1 調整前データ

図6-3-2 調整後データ
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生基板に両面テープを貼ったら、iM-01の基準台に貼り付けます(図7-1-9)。

図7-1-9 生基板の基準台への貼り付け
この後、iM-01に0.5[mm]のエンドミルを装着して、ユーザー原点の設定を行います(図7-1-10)。
設定の方法は、"5-2.iM-01の原点設定"と同じです。X,Y軸の原点は左下隅(機械座標系の原点)に置きます。Z軸の原点は生基板の表面です。

図7-1-10 Z軸の原点出し
これで、生基板の設置と、iM-01の調整は完了です。
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7-3 基板切削完了
加工が完了したところが図7-3-1になります。

図7-3-1 加工完了
基板のパターン面が図7-3-2、部品面が図7-3-3になります。
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