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はてなブックマークに追加   フルディジタル マルチアンプ・システムへの道 (1) 

●はじめに
 これから、Behringer社のチャネル・デバイダDCX2496をディジタル出力に改造するボードに関連して、フルディジタル・アンプやチャンネル・ディバイダに関する解説を、数回に分けて連載していきます。
 「厳密に」よりも「わかりやく」を目的で記述しますので、詳しい方は用語の用法や意味で突っ込みたくなることがあると思いますが、その点はご容赦ください。 

D級アンプ、フルディジタル・アンプ(1)

アナログ・アンプとディジタル・アンプ
 オーディオ用アンプについて、最近、「デジタルアンプ、ディジタル・アンプ」という言葉を耳にすることが多くなっています。カタログやWebサイトで「ディジタル・アンプ採用」「自作ディジタル・アンプ・キット」などをよく見かけることと思います。
 まず非常におおざっぱに分類すると、この言葉は以下のように使われているといえるでしょう。

  • アナログ・アンプ=最終的な増幅素子には、滑らかに変化するアナログ信号が入力される。
  • ディジタル・アンプ=最終的な増幅素子には、ディジタル信号(ON/OFFのみ)が入力される。

 増幅素子というのは、トランジスタでも真空管でもFETでもかまいませんが、ディジタル・アンプでは後に述べるスイッチング動作を簡単に実現できることから、たいていFETが使用されます。

slide1.png
図1. アナログ・アンプとディジタル・アンプ

 次に「D級」という用語ですが、アナログ・アンプの増幅方法について「A級」「AB級」という言葉を聴いたことがあるかと思われます。

* A級アンプ=正、負側の増幅素子が、いつでも両方ともONの状態である。
* AB級アンプ=入力信号の小さい範囲では、正、負、側の増幅素子が両方ともONの状態で、協調して動作する。正の大きい入力では、正側の増幅素子だけがONになり、負の大きい入力では、負の側の増幅素子だけがONである。
* B級アンプ=入力信号が正のときは、正側の増幅素子だけがON。入力信号が負のときは、負側の増幅素子だけがON。
* C級アンプ=入力信号がある値を超えるまで、増幅素子はONにならない。中間でどちらもOFFの状態がある。

 アナログ・オーディオ・アンプ用に使えるのは、A級とAB級になります。B級では、信号がゼロの近辺でひずみが出てしまいますし、C級アンプでは小さな音が出てくれないことになります(モータ駆動用など向け)。

 D級は「Digital級」の略なのかもしれませんが、上の例とはちょっと違い以下のようになります。

* D級アンプ=最終段の入力がゼロのときは増幅素子はOFF。入力があるときは増幅素子がON。

 アナログ・アンプでは信号が連続的に変わるので、良い音で出力するには、負の最大値から正の最大値まで、正確に増幅できなければいけません。一方、ディジタル・アンプでは、ONとOFFの中間を考慮しないで済みます。ONのときに一定倍して出してくれるならOKです。アナログ・アンプよりデバイスに対する要求度が低くなります。
 ということで、ディジタル・アンプとアナログ・アンプ、A級アンプとD級アンプというのは一応別々の話になりますので、以下のようなものもありえます。

* A級ディジタル・アンプ=能力的に無駄になる部分が多いが、良い音がするかもしれません。
* D級アナログ・アンプ=非常にひずみが大きくて使い物にならなそうです。

 したがって、「D級アンプ」といえばたいがいディジタル・アンプのことになり、「アナログ・アンプ」といえばたいがいA級・AB級アンプのことになります。
 個人的には、最終段に真空管を用いた「ディジタル・アンプ」があってもよい(むしろ所有してみたい)と思うのですが、商品化には無理がありそうです。真空管自体はMHz、GHzの増幅にも使えるものなので、ディジタル・アンプの数百kHz~程度の動作には何の問題もありませんが、イメージというものが重要ですから。

●A、AB、B、D級動作

slide2.png
 
図2.プッシュプル方式によるアンプの増幅方式の概念

 図で色つきの部分が、増幅素子が使われる部分です。A級、AB級アンプでは、入力が0のときでも、増幅素子は両方とも動いており、出力はつりあってゼロになっています。このときの電力は無駄になってしまいます。
 D級アンプでは極端にいえば、増幅素子がON/OFFにさえなればよく、つまり「スイッチング」動作ができる素子であれば使うことができます。A級、AB級のようにプラス、マイナス側でつりあいが取れている素子(コンプリメンタリ)の組み合わせにする必要もありません。

ディジタル・アンプの出力ローパス・フィルタ
 このようにディジタル・アンプの大きな特徴に、

* 素子に要求される動作が単純。
* 電力効率が良い。

ということがあり、したがって、


* 部品数を減らせる
* 小型化できる
* 安価に作れる
* 携帯機器に適する

などの利点が出てきます。オーディオ的にいっても、信号が通過する部品数が減るのは良いことです。
 また、アナログ信号の精度を高く保ったままでいろいろな部品を通過させるのは大変です。抵抗には熱雑音がありますし、コンデンサの周波数特性は均一ではないです。また、理想的な増幅素子などありません。しかし、ディジタルであれば、信号の持つ情報量を保って伝送することができます。
 しかし、ディジタル・アンプには、アナログ・アンプでは不要な要素を一つ追加しなければなりません。これはON/OFF信号であるディジタル・アンプの出力(高周波信号)から、オーディオ帯域の信号(低周波信号)を取り出すためのローパス・フィルタです。
slide3.png図3. 出力に入るローパス・フィルタ

 このローパス・フィルタは微妙に音質に影響します。スピーカそのものがコイルであり抵抗分もありますから、マッチングによっても変化します。コイルには抵抗値やコアひずみの少ないものを使用したほうが良いでしょう。なお、アナログ・アンプでも、目的は違いますが、出力の直前にコイルと抵抗を並列に入れているものはあります (Zobelネットワーク)。

 次回は、アンプに最初に入力される信号がアナログかディジタルかの違いについて説明する予定です。


 筆者の所属するKENRICK SOUNDでは、主にJBL社製の大型中古スピーカを取り扱っています。また、この連載の後半で紹介する、チャネル・デバイダDCX2496の出力をディジタルに変更する改造も行っています。

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2008年2月 6日 13:00に投稿されたエントリーのページです。

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