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チャネル・デバイダによるマルチアンプ

 今回はマルチアンプについて解説します。

マルチアンプとマルチチャネルの違い
 ホームシアターで使われる5.1ch、7.1chなどにも複数のアンプが使われますが、この場合には「マルチチャネル」といいます。マルチアンプは、1チャネルに対して複数のアンプを使用する方式です。

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図6.マルチチャネル、マルチアンプの構成

  DVDなどにはステレオ用だけではなくサラウンド用の信号(センタ用、リアのサラウンド用)も含まれており、AVアンプがこれを各スピーカに振り分けます。  マルチアンプは一つのチャネルに含まれるスピーカ素子一つずつに対して贅沢に一つのアンプを割り当てる方式です。  このために使われるのがチャネル・デバイダであり、図の場合には、入力される音声信号を高域、中域、低域に分解して各アンプに配分する役割をもっています。

スピーカの中身
 マルチアンプで使われるスピーカは、普通に市販されているものとは少々異なります。市販のスピーカで複数のユニットが搭載されているものは、内部にスピーカ・ネットワークを内蔵しています。このスピーカ・ネットワークを用いて、高域用のツィータ、低域用のウーファなどに信号を分配しています。
 

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図7.市販スピーカとマルチアンプで使用できるスピーカ


 一方、マルチアンプで使用するスピーカには、ネットワークを入れません。先ほど出てきたチャネル・デバイダによって、すでに信号が高音、中音域、低域に分けられているからです。

 スピーカ・ネットワークには、コイルとコンデンサが使われています。これらの構造を復習しておきます。
コイル:電磁石の実験で見たことがあると思います。コイルに電流が流れると、磁力が発生します。オーディオ信号は交流なので、プラス/マイナスが変わるごとに磁力の向きが変わります。このたびに電力が使われてしまいます。したがって、周波数が高い(向きが変わる回数が多い)ほど多くのエネルギーが使われます。つまり、コイルは高域の信号を流さないように働きます。コイルのインダクタンス(巻き数、直径、芯の材質による)によって、どの周波数から上を通さないようにするかを決められます。
コンデンサ:コンデンサの中身には、広い面積の導体膜がわずかな間隔をあけて収納されています。間隔があいているので、電流がその間を流れることはできません。しかし、両側の導体膜に対して、電子の「出入り」は可能です。一方の膜で電子を出入りさせる速度を上げると、他方の膜でそれに対応して(反発して)電子の出入りが起こります。したがって、コンデンサは、「遅い出入りは伝わりにくい」つまり、低い周波数の信号をせき止める役目をもちます。コンデンサの容量は、膜の面積と間隔、何をはさむかによります。容量を変えることで、どの周波数から下を通さないようにするかを決められます。

 高域スピーカ・ユニット(左、High)には高域を通過させるハイパス・フィルタ、低域スピーカ・ユニット(左、Low)には低域を通過させるローパス・フィルタ、中央ではその組み合わせが使われています。コイル(L)とコンデンサ(C)を使ったLCフィルタです。抵抗は受け側になるスピーカ・ユニットの抵抗値が低いので使えません。
 図を見ながら、「High用スピーカでは、Cで低域がせき止められて、さらに低域はLに流れやすいから、二つの働きで高域だけをスピーカに流すようにしている」と理解してください。

スピーカ・ネットワークの欠点
 このネットワークが理想的に働くなら、わざわざ右の図のようにアンプを三つも用意する必要はありません。理想的ではないから、右の図のようにお金と場所を用意して、チャネル・デバイダと三つのアンプを用意し、しかも市販品のスピーカではなく自作したり改造したスピーカを使います。
 欠点とは以下のようなものです。

1. 容量の大きなコンデンサやコイルは、理想とは結構遠い。
2. 周波数できっちり分けることはできず、せき止め方はなだらかになる。
3. スピーカを自作する場合、細かい調節が難しい。

 たとえば、「3.5mHのコイル」を低域に使う場合、抵抗値が0.3Ωくらいは普通にあります。銅線の長さは何十メートルにもなります。「アンプとスピーカは短い線でつなぐのが良い」と書かれたオーディオ入門の記述を読まれた方も多いと思いますが、スピーカ・ネットワークは矛盾しているわけです。いくらアンプからスピーカまでを短く太いケーブルで接続したとしても、スピーカ・ボックスの中には何十メートルの細線を巻いたコイルがあります。しかも最も電力を有効に供給したい、低域ユニットにコイルの抵抗が影響してしまいます。実際に、コイルを通さず直接ウーファを駆動した低音の伸びやかな良さは、一聴の価値があります。
 また、コンデンサは、ある周波数以上では、信号からはまったく存在しないように見える(何もせき止められずに通過できる)、のが理想ですが、実際のコンデンサでは抵抗値があり、しかもコイル成分もあるので、「結局どの周波数でもある程度はせき止めてしまう」ことになります。
 (2) についてですが、「400Hz以下は全部通し、600Hzでは1%以下しか通さない」ようなスピーカ・ネットワークの作成は非常に困難です。図7の例では、たとえば低域ユニットに対して、200Hzの音はそのまま通るが400Hzの信号は200Hzの1/4の電圧、 800Hzの信号は1/16の電圧、で通過します。かなり広い周波数の幅で、複数のユニットから混ざって出た音を聞くことになります。
 自作スピーカには自作ネットワークが必要になりますが、これはかなり高価なものになります。大きなコイルなどは、1個数千円単位です。気軽に何個も買って試すことはなかなかできませんが、一方できっちりと特性を出すためには測定と変更を繰り返さなくてはなりません。無駄にコイルやコンデンサを何個も購入するのはかなり辛いものがあります。

 次回は、このマルチアンプの続きです。

 筆者の所属するKENRICK SOUNDでは、主にJBL社製の大型中古スピーカを取り扱っています。また、この連載の後半で紹介する、チャネル・デバイダDCX2496の出力をディジタルに変更する改造も行っています。

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カレンダ

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2008年2月18日 07:09に投稿されたエントリーのページです。

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