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フルディジタルのチャネル・デバイダ

なぜディジタル処理か
 チャネル・デバイダの内部は、おおむね以下のようになっています。

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図8.アナログ/ディジタル・チャネル・デバイダの内部構成

 アナログ・チャネル・デバイダは、回路的にはOPアンプによるローパス・ハイパス・フィルタ回路です。図では12dB/オクターブ(周波数が2倍になると信号は1/4)を二つ組み合わせた、24dB/Octの4Wayチャネル・デバイダを現しています(ローパス・ハイパスを組み合わせるとバンドパス・フィルタができる)。
 これには、実装の上で以下のような問題があります。

  • モジュール切り替え型:高価なものに多い。非常に多数の部品と、リレー切り替え回路(あるいは子基板差し替え)が必要。
  • ボリューム変更型:抵抗値をボリュームで変えて帯域を変更する。回路の取り回しが難しい。雑音が乗りやすい。
 一方、ディジタル・チャネル・デバイダの中身は大変シンプルです。結局のところチャネル・デバイダ機能はソフトウェアで実現されますから、アナログ・チャネル・デバイダにおける部品の変更は変数値の変更ですし、経路の変更は条件分岐文で処理をするかしないかとなります。
 アナログ・チャネル・デバイダでは機能を増やせば増やすほど、通過する抵抗/コンデンサ/端子/OPアンプ/ボリューム・・・の数が増し、高級部品を使わないと音質の劣化が無視できなくなります。
 もちろんディジタル・チャネル・デバイダでも機能を増やすにはソフトウェアを書かなければならないので大変なのですが、それでROMのサイズが増えたとしても直接音質が劣化するということはないでしょう。また、実際のソース・コードの量から言えば、むしろ大きくなるのはユーザ・インターフェース側です。

 一昔前は高額だったDSP(ディジタル信号プロセッサ)の普及により、ディジタル・チャネル・デバイダは、シンプルなハードウェアでさまざまな処理を実現できるようになっています。また、ソースがディジタルならば、直接ディジタル信号を入力することで、音質に影響するA-Dコンバータを省いて処理することができます。

なぜディジタル出力化するか
 DCX2496は、ディジタル/アナログ入力、アナログ出力のチャネル・デバイダですが、マニアには以下のような納得のいかないことがあります。

  • DCX2496は安価なのに、3ペア分、しかもバランス出力仕様で、D-Aコンバータが内蔵されている
  • D-Aコンバータは音質に大きく影響する部分である

 したがって、ディジタル出力化によって、DCX2496による音質への影響を極力減らしたいのです。

 ディジタル信号→アナログ信号への変換を行うD-Aコンバーター(DAC)は大きく音質に影響する部分で、これはCDプレーヤのカタログにいろいろ記載されていたり、単独のDACやDAC製作キットが市販されていたり、DACの自作を行う方がたくさんいらっしゃることからもわかると思います。DCX2496の DAC部分はそういった専用製品に比べるとかなり簡略な作りになっています。

 また大きな要因に、フルディジタル・アンプが市場に出回ってきたことが上げられます。プレーヤやアンプのアナログ/ディジタルの種別によって以下のような構成が考えられますが、4番目の完全ディジタル構成には、かなり良いコスト・パフォーマンスを実現する可能性があると思われます。

  1. CDプレーヤ(→A→)アナログ・プリアンプ(→A→)アナログ・チャネル・デバイダ(→A→)アナログ・パワーアンプ
  2. CDプレーヤ(→A→)アナログ・プリアンプ(→A→)アナログチャネルディバイダ(→A→)D級パワーアンプ
  3. CDプレーヤ(→D→)ディジタル入力チャネル・デバイダ(→A→)6連ボリューム(→A→)D級パワーアンプ
  4. CDプレーヤ(→D→)フルディジタル・チャネル・デバイダ(→D→)フルディジタル・パワーアンプ


 2 番目の構成はマルチアンプ入門にお勧めだと思います。既にCDプレーヤー+プリメイン・アンプがある場合、プリアウト端子から安価なアナログ・チャネル・デバイダにつなぎ、アンプにはトライパスなどの自作キットで数千円のものを使えば、トータルで5万円程度からマルチアンプを体験できます(スピーカは別途必要)。

 TacT のM2150/S2150はフルディジタル・アンプとして有名で、音のよさは各所で書かれています。KENRICK SoundではTacTとパナソニックの聞き比べを行ったりしましたが、「アナログ・アンプと違って価格の違いが音の違い、ではないようだ」と感じています。ソースからアンプまでをフルディジタル化することで、鮮度が高く情報量の多い音を割合安価に聴くことができるようになるのではないでしょうか。

(補)SW電源のノイズ
 ディジタル・アンプについて「PSRRがゼロだから電源の品質がそのまま出てくる」という話があります。  PSRR とは「Power Supply Reduction Retio」で、電源変動の影響をどれだけ出力から遮断できるか、を示します。ディジタル・アンプの出力部分は「スイッチング素子」で、電源電圧をそのままスピーカ端子へスイッチでつないだり切断したりしていますから、PSRRはゼロのように見えます。しかし実際には以下のような要因があるので、単純にゼロにはなりません。

1. フルディジタル・アンプのリファレンス回路にあるような適切な最終段用電源フィルタ。
2. 電源が出力に現れる「時間」は100%ではない(変調率に関連)。平均して半分ならその分で-6dB。
3. フルディジタル・アンプの出力にはローパス・フィルタが存在する。

 Texas Instruments社のアプリケーション・ノートSLEA049では、評価ボードでのPSRRは-58dB(20Hz-3kHz)となっています。

 ここで、3.に着目します。トランスを使ったアナログ電源の場合には、50Hz/60Hzをベースとするハムがあります。スイッチング電源の場合には、AC電源を数百kHzの周期に変換して処理するので、ハムの発生する周波数もそこまで上がります。そうすると、

* トランスを使ったアナログ電源のハム・ノイズは、フルディジタル・アンプの出力ローパス・フィルタを通過する
* スイッチング電源のハム・ノイズは、フルディジタル・アンプの出力ローパス・フィルタを通過しない

ということになり、スイッチング電源のほうが良いとも言えるわけです。
 また、フルディジタル・アンプでは、電源電圧を変化させてボリューム調節を受け持たせることから、リファレンス電圧で制御できるスイッチング電源コントローラがよく使われます。
 もちろん、ノイズはもともと少ないのが良いことは当然です。どなたか、

* 強力でロー・ノイズなアナログDCパワーアンプに参照電圧を入れ、出力を電源に使ったフルディジタル・アンプ

 などを作ってみてはいかがでしょう。


 筆者の所属するKENRICK SOUNDでは、主にJBL社製の大型中古スピーカを取り扱っています。また、ここで紹介している、チャネル・デバイダDCX2496の出力をディジタルに変更する改造も行っています。

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2008年2月27日 07:22に投稿されたエントリーのページです。

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