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 本連載では、エレキジャックNo.7(2008/07/25発売)のMission3で掲載するフルディジタル・アンプについて、設計過程を紹介します。

14Img0874.jpg
製作した基板

フルディジタル・アンプとは
 フルディジタル・アンプとはディジタル音声入力に対して出力まで内部の処理をすべてディジタルで処理するアンプです。ディジタル信号で直接A-Dコンバータを駆動するイメージになります。

 A-Dコンバータはラダー抵抗型ではなく、PWM波形を出力し、ローパス・フィルタ(LPF)で音声帯域の信号を取り出します(図1)。入力信号に対してそのまま A-D コンバータに送ると、音量調整ができないので、ディジタル演算または出力段の電源電圧で音量を調整します。

fig1.png


図1.フルディジタル・アンプの信号の流れ

デバイスを選択する
 いくつか候補のデバイスが挙がったのですが、ピン数が少なく、実績があるデバイスとして、日本TIの方から推薦された DIR9001 (ディジタル・インターフェース・レシーバ: S/PDIF から I2Sへの変換), TAS5086 (PWM processor: I2S 信号から音量を調整し、PWM を生成), TAS5142 (パワー段)を利用することにしました。

 TAS5086 のレジスタの設定(初期設定や音量調整)には、TI の MSP430 マイコンを利用します。ブロック図を図2に示します。光入力には、東芝のモジュールを、同軸入力には 74HCU04 を使ったアンプを、マルチプレクサには 74HC153 を利用しています。

zu2.jpg
図2.設計したディジタル・アンプのブロック図

各部の電源
 DIR9001, TAS5086 の電源は 3.3V です。TAS5142 のロジック部は 12V (ロジック・レベルは 3.3V系)、出力段は 0 から 34Vです。出力段が 12V のとき、最大 10W 弱×2(@8Ω)程度の出力になります。10W @8Ωで1.2A, 10W@4Ωで2.5A の電流が流れます。

 74HC シリーズは 3.3V, 5V のいずれでも動作し、DIR9001 の入力は 5V トレラントです。光受信モジュールは 3.3V, 5V のものがラインナップにはあるのですが、3.3Vタイプの小売店での入手性がよくありません。そこで、12V のスイッチング・タイプの電源を利用することにし、直接 TAS5086 に供給します。74HCシリーズと光受信モジュールの電源は 5V にし、5V, 3.3V 系には、三端子レギュレータで降圧して供給します。

各部の信号
 入力できるディジタル音声信号は S/PDIF (Sony/Philips digital interface) の 32kHz から 96kHz まで、16bit から 24bit の信号です。CD の 16bit, 44.1kHz、DAT の 16bit, 48kHz などは問題なくサポートします。192kHz については TAS5086 はサポートしていますが、DIR9001 の仕様によりサポートしません。

 DIR9001 から TAS5086 への信号は、24 bit の I2S 形式で、マスタ・クロック(MCLK)はサンプリング周波数の256倍、ビットクロック(SCLK)はサンプリング周波数の64倍としました (TAS5086 のデフォルトと同じ)。TAS5086 から TAS5142 への信号は、PWM 形式(出力波形と同じ)です。

MSP430のピン割り当て
 マイコンMSP430は 14 ピン DIP タイプの MSP430F2012 を採用しました。14ピンのうち利用できるのは電源とデバッグのピンを除いた10ピンです。TAS5086 のレジスタ設定に2ピン、状態表示LEDとスイッチ入力兼用で1ピン、ボリュームの設定用に1ピンを割り当てました。

 残りは DIR9001 の ERROR ピン(有効な信号の有無)、DIR9001とTAS5086 の RESET ピン、TAS5142 の SD ピン, OTW ピンに割り当てています。TAS5086 の MUTE, PDN については利用していません。

MSP430 の動作
 MSP430 は電源投入時に DIR9001, TAS5086 のリセットを解除し、TAS5086 のレジスタを設定した後、MSP430は入力信号を1から順に切り替え、信号のある入力を探します(DIR9001 の ERROR ピンを利用)。最初に入力の見つかったところで、サーチを止めます。電源投入時に1から4の入力に信号がなかった場合は、入力は1になります。

 初期化後は、入力切替スイッチと、音量調整ボリュームの角度を読み、マルチプレクサの制御とTAS5086のボリュームの設定をします。ほかに動 作状態を示すLEDの制御をします。入力切替スイッチ(SW701)を押すと一瞬LEDを点灯します。入力は1→2→3→4→1→...の順で切り替えま す。LEDは有効な音声入力があるときに点灯し、ないときに消灯します。TAS5142の温度が高すぎるなどの異常の時(SD, OTWピン)には DIR9001, TAS5086 をリセット状態に保ち、LEDを点滅させます。

 デバッグには USB 接続の eZ430-F2013 を利用しました。そのために基板上にはデバッグ用のピンを用意しましたが、eZ430 側のコネクタが 1.27 mm ピッチのため、松下のモーション・センサ用のケーブルを流用して接続しています。

<光永 法明>

参考文献

[1]本田 潤 編著. D級/ディジタル・アンプの設計と製作. CQ出版社, 2004.
[2]MSP430x2xx Family ユーザーズ・ガイド. JAJU037A (SLAU144B 翻訳版), 日本テキサス・インスツルメンツ.
[3]MSP430x20x1, MSP430x20x2, MSP430x20x3 Mixed Signal Microcontroller data sheet. SLAS491D, Texas Instruments.
[4]TAS5086 PurePath Digital PWM Processor data sheet. SLES131B, Texas Instruments.
[5]TAS5086 PurePath Digital PWM プロセッサ使用法. JAJA136, 日本テキサス・インスツルメンツ.
[6]TAS5142 Stereo digital amplifier power stage data sheet. SLES126B, Texas Instruments.
[7]TAS5142DDV6EVM2 User's Guide. SLLU095, Texas Instruments.

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(2008/07/31) 図2 の右のほうの、電源電圧を書いてあるところは、TAS5142 の電圧の説明ですが、若干右にずれていたのを修正しました。

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2008年7月 8日 15:51に投稿されたエントリーのページです。

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