◆ パラレル式リモコンとマイコン・カー本体の回路設計を行う
今回は具体的に、パラレル式リモコン・カー(パラレル式リモコン+マイコン・カー)の回路設計を行います。 この連載で製作するマイコン・カーのポイントは 前回 書きましたが、とくに電子回路の部分を設計する段階で必要なポイントを書き出してみます。
この連載で製作するマイコン・カーの電子回路を設計するポイント
(1) マイコン MC908QY4A フリースケール・セミコンダクタ を使う。
(2) 電源は単三乾電池 2個(3V) とし、赤外線受光部用に 5Vを用意しない。
(3) モータ・ドライバIC を 2個使ってモータを駆動する。
(4) すでにある 3種のリモコンを 10ピン・リモコン端子に接続できるようにする。
(5) 走行制御スイッチの組み合わせを検討する。
(6) シリアル式リモコンの拡張モジュールとして赤外線式リモコンを追加する。
(7) 圧電サウンダを搭載。 タイマ割り込みや PWM による発音が可能(要検討)。
(8) 1個の LED を搭載。 ポート出力や PWM によるイルミネーション点灯(要検討)。
(9) ユーザ・モード・モニタが使えるように DEBUG 端子を装備する。
(1)は、とくに問題ありません。
(2)は、すぐには使いませんが 3V仕様の赤外線受光モジュールを探す必要があります。
(3)は、モータ・ドライバICを選定する必要があります。
(4)は、すでに製作済みの各種リモコンの仕様を確認する必要があります。
(5)は、左右独立制御と一括制御の組み合わせをどう区別するか考える必要があります。
(6)は、新規設計となります。 赤外線式リモコンはもっと後の方で扱います。
(7)(8)は、一見すると何も問題はなさそうですが、そう簡単ではありません。 タイマ・モジュールの機能として PWM 出力が可能な端子は PTA0 と PTA1 です。 しかし PTA0 はデバッグ用に確保したいので、残った PTA1 をどのように使うか考える必要があります。
(9)は、最初は使わないのですがとりあえず付けておきます。 書籍 「試しながら学ぶHC08マイコン入門」 に詳しく解説されています。
それでは、作業開始です。
(1) 問題なし
(2) 3V仕様の赤外線モジュールを探す
原稿執筆時(2009年1月)インターネット通販の在庫状況
共立エレショップ ・・・・ IRM-3638N3(PDF資料) 210円(税込み)
5V仕様のものはたくさんありますが、3Vで動作可能なものはなかなか見つかりません。 探し回ったところ、共立エレショップに置いてありました。 動作電圧 2.5V~5.5V、キャリア周波数が 38kHz となっており、正に探しているものでした。 いつまで安定供給されるのかはわかりませんが、3V仕様の赤外線モジュールが入手できることがわかったので、予定通り 5V 電源は用意しないということで決定します。
(3) モータ・ドライバICを選定する
前回の写真を見ていただくとわかるように、以前の作品ではモータ駆動用にリレーを使っていました。 リレーを使うメリットは、正転・逆転の切り替えが理解しやすいことが挙げられます。 しかし 3V仕様の小型リレーというのがまた一般的ではなく、当時はアールエス・コンポーネンツで単価 420円のものを購入していました。 その後アールエス・コンポーネンツでは 3V小型リレーの取り扱いが一時期なくなっていたので、次に作るときはモータ・ドライバICを使おうと考えていたのです。
ところが、この連載が始まってしばらくした頃、秋月電子で80円の 3V小型リレー(Y14H-1C-3DS) が登場しました。 これを使うかどうするかしばらく悩んだのですが、やはりモータ・ドライバICで行くことにします。 リレーではなくモータ・ドライバICを使うメリットは、金属切片をカチャカチャ動かさないので、PWM 制御を行ってモータの出力を制御することが可能な点でしょう。 やるやらないは別として、これは大きなメリットとなります。
モータ・ドライバICは、よく使われている TA7291(東芝) を使おうと思います。 念のために販売状況を確認しておきましょう。
(左) TA7291P (右) TA7291SG
原稿執筆時(2009年1月)インターネット通販の在庫状況
マルツパーツ館 ・・・・・ TA7291P 178円(税込み)
TA7291SG 94円(税込み)
千石電商 ・・・・・・・・・・ TA7291P 179円(税込み)
TA7291SG 105円(税込み)
秋月電子 ・・・・・・・・・・ TA7291P 2個入り 300円(税込み)
若松通商 ・・・・・・・・・・ TA7291S 210円(税込み)
共立エレショップ ・・・・ TA7291P 210円(税込み)
こうして見ると入手性は非常に良いということがわかります。以前筆者もちょっとしたロボット工作に使用したことがあります(下の写真)。
ところでよく見ると、上記の型番 TA7291 の末尾がいくつか異なっていますね。 ICの中身は同じなのですが、パッケージが異なるため出力電流とピン配列が異なるのです。 末尾が P のものは放熱フィン付きSIPパッケージ 10ピンで、出力電流は 1Aです。末尾が SG のものは放熱フィンなしSIPパッケージ 9ピンで、出力電流は 0.4Aです。 これら 二つのピン配列は互換性がありませんから気を付けなくてはなりません。
末尾に G が付かない S のものは鉛フリー未対応の製品ですが、趣味で使う分には SG と同じと思って大丈夫です。 今回の作品では 3V 電源で マブチFA-130(相当)モータを回しますから、電流容量の大きな TA7291P を選択することにします。
モータ・ドライバICに TA7291P を使った 「遊歩ロボット・ニジーク」 (*1)
(注)この連載では扱いません
(4) すでに製作済みの各種リモコンの仕様を確認する
パラレル式リモコンの外観写真と回路図を示します。
これだけを見て想像が付くはずですが、車体側のマイコン回路では 10ピン・リモコン端子の 1番ピンから 5番ピンをプルアップしておいて、それぞれの信号がLになったときにスイッチが押されたと判定します。
また、車体側の回路基板に装備した 10ピン・リモコン端子は、6番ピンと 10番ピンを GND にしています。 このパラレル式リモコンと、次の 抵抗分圧式リモコンでは GND として 6番ピンを利用しています。
抵抗分圧式リモコンの外観写真と回路図を示します。
抵抗の単位はΩです。 よく見るとあまり使われないような値もありますが、いずれも E24系列 と呼ばれる数値に含まれており、それほど特殊というわけでもありません。
押されたスイッチを抵抗値によって区別する回路はこの構成のほかにも考えられます。 ここで示した構成の特徴は、複数のスイッチを同時にオンにした場合でも中途半端な抵抗値になることがなく、思わぬ誤動作を避けることができます。
車体側のマイコン回路では 10ピン・リモコン端子の 7番ピンを 1kΩでプルアップしておき、その信号線の電圧を A-D変換してスイッチの状況を判定します。
シリアル式リモコンの外観写真と回路図を示します。
これは、すでにあるシリアル式リモコンの回路図です(クリックで拡大)。 マイコンは初期型の MC68HC908QY4 を使っていました。 後で作り方を紹介するときには、改良型の MC908QY4A を使うことにします。
車体側のマイコン回路では 10ピン・リモコン端子の 9番ピンの信号を一定間隔置きに読み込み、シリアル受信してスイッチの状況を判定します。 通信仕様はいわゆる UART で、2400bps、8キャラクタ・ビット、パリティなし、1ストップ・ビット となっています。
(続く)
(*1) 「遊歩ロボット・ニジーク」 はリンク機構を利用した歩行ロボットで、本体と赤外線リモコンにそれぞれ MC908QY4Aマイコンを使用。フリースケール・セミコンダクタ主催 九十九電機後援の第二回電子工作キット製作コンテストで中級者向け部門賞を受賞した(EJレポート記事)。
『参考文献』
「試しながら学ぶHC08マイコン入門」 (CQ出版)
第9章 USB-HC08デバッグ・ツールを自作する
第10章 統合開発環境CodeWarriorを使ってみる
Appendix F KMC908QY4Aユーザ・モード・モニタ入りマイコンの知識
筆者のホームページ 『マイコン工作の実験室』
組み込みエンジニア KAWANO
